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2007/10/08

ケクーのフラメンコ・プーロ

今、家にはグレンリベットというシングルモルトのウィスキーのボトルがあって、これがあまりにもうまいのだ。12年ものというのはみんなこんなにうまいんだろうか。千円ぐらいの安いウィスキーとはまったく違うジャンルであるといってもいい。こういうものがあると、外で飲む理由を探すのがとても難しくなる。

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わざわざ飲みに行く店というものにはどういういう条件があるか。たとえばそこにフラメンコ・プーロがあるなら、飲みに行かない理由はあるまい。阿佐ヶ谷のケクーにはそれがあるらしい。

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QEQUE BAR というのが正しい店名のようだが、店の前に大きくPASTA & PIZZAと書かれていて、イタリア料理屋を思わせる。中に入ってみると、大きなカウンターとテーブルが3つ4つあり、バーらしい作りになっている。ただ、店主はカウンターの向こうでひたすらスペイン料理を作り続けている。バーテンというよりシェフといったほうが適切だ。 あるいは、ここはスペイン・バルなのか。

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そして、フラメンコ・プーロ。ここの店主はシギリージャを歌うという噂がある。喉自慢の店主といえば、いやな記憶がよみがえらなくもない。だがそんなことはいい。フラメンコ・プーロだ。そして、この店にレギュラー出演しているギタリストが、あのアグヘータ一族の伴奏を務めた若林雅人だ。

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静かに流れるカンテをBGMにスペイン料理を食べていると、常連客に声をかけられながら一人の男が入ってくる。顔を見るとその若林雅人だった。写真で見る感じよりも体脂肪率が大きいのだが、それでもオーラが出ている。すぐに演奏が始まるのではなく、まずはカウンターで食事のようだ。

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終電が気になる時間になる。店主は歌う様子を見せず、料理を作り続ける。われわれがそれを注文したからだ。若林雅人もカウンター席に座ったままだ。右手の爪を伸ばしているのを見られたわけでもあるまい。ファルセータを盗みにきたというのは確かなのだが。

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興が乗らなければギターを弾かない。これがフラメンコ・プーロだろう。ドン・E・ポーレンがそう言っていたではないか。観光客向けのフラメンコショーと同じように考えてはいけない。そもそもスペインの時間感覚からすれば夜は始まったばかりだ。しかし、もう終電が出る時間だ。

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フラメンコ・プーロ。なにが純粋であるのかということはしばしば議論になるのだが、終電の時間から逆算するという行為はいささか純粋性にかけるものだろう。第1回カンテ・ホンド・コンクールの優勝者はグラナダの会場まで歩いてやってきたらしいが、そういうわかりやすい純粋性を持たない者には、家でグレンリベットを飲むという選択肢もあるのだ。

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